今回は、HIFIMANのヘッドホン「Jade II」をレビューします。
数年前にHIFIMAN初の静電型ヘッドフォンシステムである前モデル「Jade」が発売された時には、その自然で広がりのある音場に惹かれた多くの音楽ファンの間で瞬く間に人気機種となりました。
そしてこの前モデル「jade」から何年もの長い研究開発期間を経て改善を重ね生まれた後継機が「Jade II」です。
結論をいうと、本モデルはダイナミック型では到底及ばない低音域から超高音域(7Hz~90KHz)まで広帯域における再生が可能なコンデンサー型ドライバーにより、すみずみの音が聞き分けられるくらいの音の繊細さ、圧倒的な広がり感、臨場感のあるコンサートホールにいるかのような音場は感動的なレベルで仕上がっています。
特に中高域における音の繊細さは素晴らしい仕上がりです。静電型は構造的に低音の厚みは抑え気味であるものの、芯がハッキリしていてアタック感もあります。
クラシックやJAZZだけでなく、アップテンポな曲までも爽快になるので、幅広く楽しめる音質になっています。
私もこのヘッドホンの音質を始めて聴いたときは音場の広さに惚れ込み、各楽器がしっかり分離して聞こえることに感動し、今後も長く愛用するヘッドホンの一つになりそうです。
他にも超薄型ダストカバー、自然で包み込まれるように音が広がる開放型デザイン、長時間リスニングでも疲れにくい軽量設計など魅力満載のヘッドホンです。
今回は「Jade II」の魅力を知ってもらうべく、静電型とダイナミック型の違いに触れつつ、実機レビューを紹介したいと思います。
- オーディオメーカ「HIFIMAN」とは?
- HIFIMAN 「JADE II」の基本スペック
- 「JADE II」の実機レビュー(外観・デザイン)
- 私のiphoneを使った「jade II」の試聴構成
- 静電型(コンデンサー型)とは、薄い振動板を静電気で振動する方法
- 「JADE II」は静電型好きなオーディオマニア向け。
- まとめ
オーディオに高音質を追求してみたい方へ向けて「ハイレゾ」について詳しく解説しています。
オーディオメーカ「HIFIMAN」とは?
HIFIMANは、Fang Bian氏がニューヨークで2007 年に創設した会社です。早くからハイレゾオーディオの重要性に着目したオーディオ企業のひとつです。
HIFIMANはその功績が広く認められ2019年から一般社団法人日本オーディオ協会の会員となっています。
HIFIMANの製品はオーディオマニアを熱狂させたHE5平面駆動型ヘッドフォンを始めとして、高性能ヘッドフォンとポータブルオーディオを最も多く開発したメーカーのひとつとして認知されています。
平面駆動振動板の入門モデル「HE400SE」は以下で実機レビューしています。
最近では「Deva Pro」という有線と無線のハイブリッドヘッドホンも発売され人気です。こちらも実機レビューしています。
また、HIFIMANではヘッドホンだけでなく、ワイヤレスイヤホンも販売しています。
独自のトポロジー振動板を採用している「TWS800」もレビューしています。
HIFIMAN 「JADE II」の基本スペック
ヘッドホン対応周波数:7Hz~90KHz
ヘッドホンタイプ:開放型
ヘッドホンバイアス電圧:550V-650V
ヘッドホン重量:365g
アンプ重量:6.5kg
アンプサイズ:276 x 270 x 116 mm³
付属品:専用アンプ
静電型の専用アンプをすでに所有している方はヘッドホン単体でも販売しています。
「JADE II」のレビュー動画
こちらは英語によるレビューですが、ポイントがシンプルにまとめられており、「jade II」の特徴がつかめるかと思います。
このレビュワーの人もやはり高域についてはとても高く評価しています。
また、装着時のヘッドホンの軽さやフィット感についても私と同意見でとても軽く良いとコメントをしています。
「JADE II」の実機レビュー(外観・デザイン)
こちらがHIFIMAN「JADE II」の外観になります。静電型振動板はとても薄いので、ヘッドホン装着部本体の厚みも薄くなっています。
とても軽いので装着時も違和感や圧迫感がありませんでした。
ヘッドホンの外観はとてもスタイリッシュでカッコいいです。開放型のヘッドホンなので、内側の静電型振動板が薄っすらと見えます。
端子部分は固定式で、着脱式ではありません。
jadeとjade IIの比較が画像を載せました。このように前作よりもスリムでスタイリッシュになっています。
ヘッドホンの外側は振動板の光の反射の加減によって、絶妙にグリーンとパープルが入り交ざったような光沢のあるカラーがかなりカッコいいです。
jade IIの端子は、こちらのようになっています。
端子は5極端子タイプになります。静電型専用アンプに接続して聴くスタイルが基本になります。
端子はSTAXと同じでSTAXのアンプに繋げても鳴らせるようです。STAXのアンプを所持している人ならヘッドホンのみの単体販売もあるので、少し安くすみますね。
「jade II」のケーブルは分厚いテープのような平板形状になっています。
こちらが専用アンプです。
サイズは写真で見る以上に実物は結構でかいです。左から順に電源ボタン、ヘッドホン端子、バランスとRCAのセレクター、アンプのボリュームつまみです。
さわった感触ではかなり頑丈で、しっかりとした作りになっています。
アンプの背面です。「RCA」のL,Rインプットと「バランス接続」のL,Rインプットがあります。
私のiphoneを使った「jade II」の試聴構成
参考までに私はこのような構成で試聴してみました。iphone⇒Fostex「HP-P1」⇒HIFIMAN 専用アンプ⇒jade II
本当はCD音源から直接読み込ませる方式にした方がより損失も少なくできるのですが、スペースの都合上今はこの構成にしています。アンプは持っているので、片付けができたらもう少しイカツイ構成で聴いてみたいと目論んでいます。
iphoneをFostexの「HP-P1」のヘッドホンアンプにつなげ、そこからRCAインプットで接続して鳴らしています。「HP-P1」を通すことで、iPhone直刺しとは全く音が違い、音の解像度がグッと高まる感覚があります。
静電型(コンデンサー型)とは、薄い振動板を静電気で振動する方法
静電型ヘッドホンは、ほとんどのヘッドホンが採用するダイナミック型ドライバーとは発音の仕組みが異なります。
ダイナミック型の基本となるボイスコイルやマグネットは不要です。静電型ではマグネットがいらないので、超軽量設計が可能になります。
発音原理としては、2枚の振動板を向かい合わせ直流電圧をかけてやると極同士がひきつけあいます。
一方を堅い材料、もう片方を薄い柔らかい振動板にします。ここにアンプからの電流を流すとスピーカーの振動板として機能します。
一般的にはこの形式がシングル型と呼ばれますが、固定板と振動板の間は薄く振幅ができないことから高域しかだせないツィーターとしてしか利用できません。
実際のコンデンサースピーカーは2枚の固定極の間に振動板をはさむ形のタイプのものが主流になっています。
この方式をプッシュプル型と呼びますが、こちらのほうが大きな振れ幅をとれるので、フルレンジスピーカとして利用が可能になります。
分解して確認はしていませんが、超広帯域であるので「jade II」もほぼ間違いなく「プッシュプル型」になっていると予想できます。
・振動板全体に均一に信号が伝わるため、分割振動しにくいので、中高域が特にクリアで繊細な音を鳴らせる
・振動板が超軽量
・過渡特性が良く、広がり感、臨場感のある音場が作れる
・成極のための直流電圧が必要⇒(静電型専用アンプが必要)
・大出力には適さない⇒ヘッドホンなど近接でならすには十分な音圧
・指向性が鋭い⇒ヘッドホンなら近接なので、関係なし
振動板全体に均一に信号が伝わるため、分割振動しにくいので、中高域が特にクリアで繊細な音を鳴らせるという点はダイナミック型では苦手なので、静電型の大きなメリットになります。
さらに過渡特性がよいので、音の余韻や広がり感につながっています。
また、コンデンサー型スピーカは一般的には大入力を入れられず、指向性が鋭いという欠点もヘッドホンなら近くで鳴らすので、関係ありません。
しいてあげるのであれば、サブウーファーのような超低音は鳴らしません。
上品で綺麗な広がり感、臨場感のある広帯域の音質を楽しみたい人向けの音質です。
「jade II」の振動板には超薄型のナノテク振動板を採用
「jade II」の振動板には薄さが0.001mm以下のナノテク振動板が採用されています。一般的に振動板は薄くて軽いと、高域の伸びがよくなります。
通常のダイナミック型で紙の振動板だと、0.5mmなので1/500以下の厚さです。
しかも、静電型である「jade II」が得意とする高域での歪はほぼゼロになるので、とにかくクリアで伸びやかな繊細な音を鳴らしてくれます。
「JADE II」は静電型好きなオーディオマニア向け。
まずはじめにこのヘッドホンはオーディオマニア向けの商品です。
専用アンプとセットなので、ワイヤレスで手軽に持ち運んで、楽しむヘッドホンではありません。自分の部屋の中でひたすら好きな音楽に没頭したい人におすすめしたい商品です。
コンデンサー型(静電)振動板を採用したヘッドホンとHIFIMAN独自のアンプシステムがセットで、まさに性能を”音質に全振り”した究極のヘッドホンといえるでしょう。
「JADE II」の価格はアンプ付きで18万7000円(※投稿時)です。
多くの人はこの値段を高いと思うかもしれませんが、参考までに静電型ヘッドホンとして有名なメーカの一つであるSTAXだとヘッドホンのみで約60万円するモデルもあります。
アンプ付きなら静電型の中では十分コスパは良いと個人的には思っています。
まとめ
今回は、HIFIMANのヘッドホン「Jade II」をレビューしました。
私たちが普段耳にしているほぼ9割以上はダイナミック型と呼ばれる方式のスピーカ構造になっています。ちなみに私が普段仕事で設計しているスピーカは10割がダイナミック型です。
ヘッドフォンでは耳の鼓膜の近くで音を鳴らすが故にスピーカーシステムのウーファーのような大振幅は必要なく、応答性能の高さこそが最優先で求められます。
帯電した超軽量の振動膜をプッシュプル型で駆動する「JADE II」の静電型ヘッドフォンは、まさにヘッドフォンによる音楽再生という目的に適った発音方式と言えます。静電型ヘッドフォンはとても繊細でクリアで解像感に優れた音を聴かせてくれます。
まさに、「耳が幸せになるヘッドホン」と言えます。
ぜひ、また一味違った音質を体感したい人にはぜひ「jade II」をおすすめします。
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