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現役スピーカー設計者によるお役立ち情報発信ブログ

【VGP2022金賞 final ZE3000 レビュー】超低歪のドライバー採用で音のクリアさが抜群な高音質ワイヤレスイヤホン

ZE3000 レビュー

今回は有線イヤホンで幅広いファンを獲得しているfinalから待望のワイヤレスイヤホン「ZE3000」が発売されたので、さっそくレビューしました。

 

本モデルはすでにVGP2022の企画賞と金賞を受賞している評価も高いイヤホンです。

 

ZE3000の製品名は、finalブランドを代表する有線イヤホン「E3000」に由来しています。

 

E3000は2017年の発売以来、累計販売は国内外で数十万台を超え、日本最大のオーディオアワードVGPでも異例の10期連続で金賞を受賞しています。

 

このE3000の血を受け継ぎワイヤレス化したイヤホンが「ZE3000」になっています。

 

結論から言ってしまうと、開発にも長い期間がかかっただけあって、音の分離が抜群に良い(特に中高域)です。ASMRにもすごくあう音質です。

 

有線イヤホンと勘違いしてしまうぐらいに、歪っぽさがなくとにかくクリアで済んだ音質に仕上がっています。

 

逆に言うと粗削りさや派手さがないですが、音楽を純粋い楽しむことに集中でき、強調された帯域もなく、自然でクセが無く、スッキリとしているのが私好みです。

 

ノイズキャンセリングイコライザー機能も無く、価格も1万円台と決して安い部類ではないので、これで音質まで微妙だったらさすがになと覚悟を決めて聴いたのですが、その不安は一瞬で払拭されました。

 

音質のみでの対決なら、2万円台のイヤホンと普通に肩を並べる自信をもっておすすめできる実力派のワイヤレスイヤホンです。

 

今回も現役のスピーカー設計者ならではの視点を入れつつ、詳しくレビューしていきたいと思います。

 

finalとは

近年特に脚光を浴びているS'NEXT株式会社の和製ブランドが「final」となります。斬新な発想と高い技術力により、オーディオマニアを中心に高い評価を得ています。

 

Finalと言えば、ポタオデ好きの中では有名なメーカーで、有線イヤホンのイメージが強いと思います。

 

例えば、時間応答にこだわって生まれたAシリーズなどがあります。

Aシリーズ final

 

やはり定番と言えば、Eシリーズですね。

Eシリーズ final

 

そして、このEシリーズがもとになって生まれたワイヤレスイヤホンが「ZE3000」になります。

 

有線イヤホンである「E3000」が発売された当時、同価格帯のイヤホンは、一聴した際に強い印象を与えられるように、低域と高域を共に強調する派手な音作りがされた製品が主流でした。

 

一方で、一聴した際の派手さはありませんが、音楽を楽しむことに集中できる製品として高い評価を受け、定番イヤホンとなっています。

 

いまだに有線イヤホン派が根強く残っているのもfinalを始めとした多くのオーディオメーカがオーディオ好きを満足させてくれる商品を次々と生み出してくれていることが理由になっています。

 

Final「ZE3000」のカラー・スペック情報

ZE3000 レビュー

カラーは「ブラック」「ホワイト」の2色です。

 

イヤホン本体と充電ケースは軽量の樹脂筐体でありながら、高級カメラの軍艦部を思わせる光沢感のあるシボ塗装仕上が施されています。

 

通常このようなシボ塗装は金属表面に焼き付けて施されるのですが、樹脂表面にも施せる特殊加工なっているため、傷がつきにくく長期で使える仕様になっています。

 

イヤホンケースはわりと樹脂で傷がつきやすいケースが多かったりするので、傷がつきにくいのは嬉しいです。

 

ZE3000 ホワイト

白は透明感、清潔感のあるカラーに仕上がっています。

ブラック ZE3000

白と対照的な黒は大人っぽいカラーになっています。カラーが違うだけでがらりと印象も変わります。

スペック

・カラー:ブラック、ホワイト

・イヤホンタイプ : カナル型

・充電コネクター:Type-C

・防水規格:IPX4(生活防水)

Bluetoothバージョン : Bluetooth 5.2

・対応コーデック : AAC,SBC,aptX,aptX adaptive

・再生時間:35時間

・充電時間 : 1.5時間

final「ZE3000」の実機レビュー

ZE3000 レビュー

こちらがパッケージになります。一般的なワイヤレスイヤホンのパッケージより倍近い大きさです。

 

final ZE3000

パッケージを開けると、イヤホンとケースが別々に収納されています。

 

final ZE3000 口コミ

同梱品は「イヤピース、USB-C、説明書」です。

 

フィット感のよいイヤピースを装着することで、低域ブーストができる!

イヤーピース 周波数特性

ここで「ZE3000」のイヤピースの説明に移る前に耳の密閉度の重要性について説明しておきます。

 

上のグラフの通り、密閉度の低いイヤホンだと「b」のような特性になるのに対して、フィット感の高いイヤーピースを付けると「a」のように低域がブーストされます。

 

ZE3000のイヤホンはイヤピース付きのカナル型

final ZE3000

こちらがイヤホン本体になります。

 

外観はagでも採用されている粉雪塗装のような傷のつきにくい長く安心して使える仕様になっています。

ZE3000 評判

ZE3000 レビュー

ZE3000は一般的なイヤピース付きのハウジング先端にポートがついているカナル型イヤホンです。

 

イヤホンのタイプは大きくわけて二種類ありますが、イヤピースのない直接ハウジングを耳に装着するタイプがインナーイヤータイプと呼ばれ、ZE3000のように先端にポートがついているイヤピースを装着するタイプはカナル型と呼ばれます。

 

カナル型の大きなメリットはインナーイヤーに比べ、密閉感を増幅させることができるため、低域が豊かになります。

 

一方で、イヤピースの種類によっては圧迫感を感じてしまうなどのデメリットも存在します。

 

カナル型の特徴 
■メリット
・耳に適度にフィットするので、豊かな「低域」を再現
・遮音性が高く、ノイズキャンセル要らず
・激しい運動をしても、耳から落ちにくい

■デメリット
・周囲の音が聞こえないので、電車のアナウンスなどを聞き逃しやすい
・耳への圧迫感がある

数多くのイヤホンはカナル型が主流なのですが、カナル型では耳栓をするほど低域が豊かになる一方で、圧迫感があり、長時間装着していると耳が痛くなるなどリスニングにはあまり向きません。

 

そこで、イヤピースの種類がとても重要になります。

 

ZE3000のイヤピースは装着感&密閉感抜群!

イヤピース

さすがのfinalさんってことで低域感や装着感を大きく左右するイヤピースのサイズもしっかり豊富に準備されています。

 

メーカさんによっては、せっかくイヤホン本体はとてもいいのにイヤピースにはあまり力を入れてない企業さんも実は多くあります。

 

ZE3000のイヤピースはサイズの軸色が異なる(BLACKに同梱のイヤーピースは薄いグレーと濃いグレーの交互、WHITEに同梱のイヤーピースはクリアと白の交互)ので、サイズの判別もしやすくなっています。SS/S/M/L/LLの5サイズを同梱しています。

 

抜群の装着感と遮音性で好評のイヤーピース「TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様」を5サイズが同梱されています。

 

一般的なイヤーピースは、耳穴の奥を強く圧迫する形状のものが多く、長時間装着していると痛みや疲れの原因となります。

 

新しい「TYPE E」仕様では、耳穴の入り口にソフトに装着するタイプになっており、異物感がほとんどありません。装着感そのものを最小にすることで最高の装着感が実現されています。

イヤピース

・対応サイズはSS/S/M/L/LLの5サイズ

・BLACKに同梱のイヤーピースは薄いグレーと濃いグレーの交互、WHITEに同梱のイヤーピースはクリアと白の交互

・抜群の装着感と遮音性で人気のイヤーピース「TYPE E」採用

・耳穴の入り口にソフトに装着するタイプになっており、異物感もほとんどなし!

ZE3000のイヤホンは形状も緻密に設計

ZW3000 口コミ

ZE3000の筐体は3点で保持することにより安定した装着感となっています。

 

上の図のピンク色の部分(耳のポケット)のいずれか1点と、緑色の部分(イヤーピース)の1点、青色の部分(耳珠)の1点の合計3点となります。そのため、多くの方の耳に適合します。

 

接する点全てに圧迫感が無ければ、これほどイヤホンの装着は快適なのかと感じていただける、まるで自分だけのためにカスタマイズしたイヤホンであるかのような優れた装着感となっています。

 

公式HPでも説明がありすが、ZE3000では、これまでの有線イヤホンで確立したIEMの最適解である筐体設計をベースに、より優れた装着感が再現されています。

 

一般的に、イヤホンの装着感が優れているか否かは、圧迫感がいかに少ないかで決まります。

 

有機的で大きな面で耳に接する形状に比べ、接触面積を限定する形状により、圧迫感の無い装着感を目指されて設計されています。

 

実際に私も装着してみましたが、フィット感が良いだけでなく、しっかり圧迫感がなく、かつ適度な低域を感じられました。

 

なかなかここまで一つ一つの仕様に対してこだわって設計しているメーカーさんも少なく、しっかりと詳細の仕様説明をしている点がとても技術者のレベルの高さを感じさせられます。

 

超低歪を実現する新設計ドライバー「f-Core for Wireless」搭載

final ZE3000

ここからは少し専門的な説明をしていきます。

 

イヤホンの音質の約8割を決定する重要な役割をはたすドライバーの仕様について説明します。上の図はドライバーの断面を示しています。

 

みなさんも色々なレビューを読んで、ただこの商品は良いんです!って闇雲に言われても正直何がどういいんだよ!って思うこともしばしばあるのではないでしょうか。

 

私もいろいろなイヤホンをレビューしてきて、ドライバーの情報、F特性なども公開していればもう少し詳細なレビューもできるし、したいとむず痒く思うこともしばしばあります。

 

ですがメーカーさんの技術のコア部分になり機密情報的な部分もあるので、普段は言及することはないのですが一般公開しているので、私も普段の仕事で最も関係する部分なので、今回だけはいつもより熱く語りたい(いやいつも熱く語っているつもりですが…)と思います。笑

 

さて、まずは振動板についてです。振動板の材料こそ詳細は記載されてませんが、ZE3000はフリーエッジと呼ばれる振動板の中心にある胴体部分とエッジが別素材で構成される音質面で有利な仕様です。

 

F0(最低共振周波数)を低く調整がしやすく、低域に有利かつ歪も低く調整がしやすいメリットがあります。また、耐入力面でも大入力の振幅の追従性が良いです。さらにフリーエッジでは胴体に別材料を選べるので適度な内部損失と硬さを有する素材により高域もより伸びやかになります。

 

もう一つはフィクストエッジと呼ばれる振動板の胴体とエッジが一体で構成されているタイプが主流ですが、こちらはいわゆるドンシャリ音質に向いており、高域の伸びが良いメリットがある一方で、F0が高かったり、耐入力、歪が高くなりやすいなどのデメリットがあります。大半のメーカさんではこのフィルム一体型が主流です。

 

私がイヤホンを購入する立場なら、まよわずフリーエッジタイプを選びますね。

 

また、コイルにはCCAW線を採用しており、インダクタンスが低くなるため高域が伸びやすい特徴がある一方で、線が細く断線しやすいので、製造難易度が高めです。

 

なので、安い仕様のコイルはうちでもほぼCu線を採用していますね。

 

ZE3000はクリアな音質の秘密は圧倒的なTHDの低さにあり!

ZE3000

歪み…信号波形が変形すること。通常は非線形な変形を意味します。全高調波歪(THD)、あるいは、全高調波歪(THD)にその他の歪を加えたTHD+Nが、オーディオ機器の性能を表す指標として用いられています。

 

THDは歪の大きさを意味しており、一般的にTHDが低い⇒歪が低い⇒音がクリアで原音忠実再生に近づくと思ってもらえればOKです。

 

ワイヤレスイヤホンについて、ゼンハイザーさん以外で歪をスペックに表示しているメーカーさんは私も初めて見ました。

 

経験的にも歪(THD)が1%台はかなり低いです。一般的にドライバーの歪は低ければ低いほど良いです。

 

ひと昔前の雑音だらけのラジオのような音質が好きという方がもしいれば別ですが、そのような方はそもそもこのようなイヤホンを探そうとは思わないと思います。

 

ドライバーの歪が低いとどういうメリットがあるかというと、一部の周波数をアンプなどでブーストさせる音質調整(イコライザー)時にも有効に働きます。


完全ワイヤレスイヤホンはソフトウエアによるイコライザーに大きく頼った音質調整が行われていることが多く、副作用と言える問題が発生します。

 

その結果聴き疲れしやすい音質になりがちです。ZE3000ではドライバーユニットの基本性能を高め、イヤホンの筐体内部の音響空間を利用したアコースティックな音質調整により、イコライザー無しで十分に満足できる音質になるように調整されています。

 

その上で狭い帯域の音圧をピンポイントで下げるなど、イコライザーにしかできない極めて効果的な補正は入っています。

 

しかし、このイコライザーによる調整を有効に生かすには、極めて高い精度の音圧周波数特性を持つドライバーユニットが必要です。もし一般的な精度である3dB程度のバラツキがあれば、イコライザーによる補正を行なうことが却って不自然な結果をもたらすことになるということです。

 

つまり、歪の高いドライバーでイコライザー調整しても、音のクリアさ損なわれるだけになってしまうという意味です。

 

こうした徹底的な歪みの低減策より、他の音に埋もれて聴こえにくかった一音一音の細かな部分を明瞭に聴き分けることが可能になりました。

 

さらには、残響音が減衰していく過程を最後まで聴きとれることで、音楽の音空間の広さまでもしっかりと感じられるようになっています。

 

ZE3000はハウジング設計も緻密な設計

ZE300 レビュー

ZE3000では筐体の内部圧力を最適化する「f-LINK ダンピング機構」が採用されています。

 

完全ワイヤレスイヤホンは、バッテリーや電子基板、アンテナ等を筐体内に高い密度で収めなければいけません。そのため音質調整の自由度が低くなってしまいます。

 

また、完全ワイヤレスイヤホンには防水性能が求められるため、イヤホン筐体内部の音響空間の圧力を最適化するベント(通気孔)を筐体外部に開けるけることができません。

 

その影響で、ベントを持たないイヤホンでは、低域が過多になり、バランスを取るために高域を強調せざるを得なくなります。

 

低音が強調されること自体は悪いことではないのですが、不必要な低音強調によっては音のバランスが崩れてしまったり、歪っぽさが出てしまい結果的に不自然な音質になってしまいます。

 

あまり言及されることは少ないですが、完全防水対応のイヤホンは多少なりの音質を犠牲にしていることの裏返しでもあります。

 

結果として、低域と高域を共に強調した派手な音作りになるだけでなく、ボーカルが遠くなるなど、自然さが失われる傾向があります。

 

ZE3000では、イヤホンの筐体内部の音響空間の圧力を最適化し、筐体外部へのベント無しで有線イヤホンと同等の音響設計を可能にする「f-Linkダンピング」機構が搭載されています。

 

これにより、完全ワイヤレスイヤホンの音質設計では実現することが難しかった低域のコントロールを適切に行なうことができるようになり、遠くなってしまいがちなボーカルをアーティストが意図したバランスで再生します。

 

またドラムのキックや、ベースラインといった低域再生においても、ドライバーユニットの超低歪と相まって、低音の中に細かな強弱の表情を感じられる質の高さを実現しています。

 

ケースはfinalらしいシンプルかつ清潔感のある仕様

final ZE3000

イヤホンケースはこちらになります。ケースもイヤホン本体と同様にきずのつきにくい粉雪塗装になっています。

 

ZE3000 レビュー

ケースの充電は「USB-C」タイプになっています。

 

ZE3000

イヤホン重量は「10g」の軽量タイプです。

 

ZE3000 レビュー

ケース重量は「42.1g」です。

 
「ZE3000 」は”軽量タイプ”

ケース重量(本体込み):42.1g
イヤホン重量(L・R):10g(片耳:5g)

音質は幅広い帯域でクリアなフラットな音質

CX Plus True Wireless 音質

今回も邦楽ロック(YOASOBI,WOMCADOLE,藤井風,マカロニえんぴつ,KingGnu,BUMP...etc)を中心に聴いてみました。

 

音質はファーストインプレッションで音のクリアさが際立っていました。低域を無理に強調するわけでもなく、それでいて自然な鳴りっぷり。

 

ASMRとも相性がよく、とにかくワイヤレスであることを忘れ、きらびやかで繊細な音を鳴らしてくれます。

 

ギター、ベースやドラム、シンバル、ハイハットなどメインの楽器がそれぞれしっかりと音として区別がつけられ、それでいてボーカルの声がしっかりのってくるような感覚があります。多くのイヤホンでは特に楽器がごちゃっと混ざって聞こえることが多いのですが、そのような雑さがありません。

 

これもドライバーの歪が低い恩恵を十分に受けている理由だと思います。

 

ロック系からPOP、JAZZ、オーケストラ系など幅広く聴ける音質になっています。

 

まとめ

ZE3000

今回は有線イヤホンで幅広いファンを獲得しているfinalから待望のワイヤレスイヤホン「ZE3000」が発売されたので、さっそくレビューしました。

 

今ではAmazonなどのネットショップでも「ZE3000」ははやくも大人気で品薄になっているようです。

 

おそらくここまで音質面にこだわって設計されたイヤホンはなかなか探しても見つからないと思います。反ワイヤレス派のポタオデファンの方にもぜひ試聴してもらいたいです。

 

レビューで紹介した通り、音質を最大限良くするためにイヤホンのドライバー構造、ハウジング、そしてイヤピースまでひとつひとつの仕様にこだわり抜いていることが感じとれました。

 

個人的にも私が今年レビューしたワイヤレスイヤホンの中でも最もおすすめしたいイヤホンにはいります。

 

ぜひ、有線イヤホンと肩をはれる「ZE3000」を体感してみてはいかがでしょうか。

 

 

可愛いおしゃれなイヤホンは以下で紹介しています。

redo5151.hatenablog.com

 

おすすめのワイヤレスイヤホンを価格別で詳しくまとめています。

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